こんにちは、スクラムマスターやってます貫名です。
先月のこととなりますがGlobal Scrum Gathering 2018 @ Minneapolisに参加してきましたのでそのレポート記事をアップしたいと思います。個人の主観を通した内容ではありますが、どんなカンファレンスだったのか参考になれば幸いです。
参加までの経緯
会社の現状
技術指針にもあるとおり、弊社ではチーム開発を実施する際の選択肢としてスクラムをおき、日々の業務活動で活用しています。
一部の現場社員に経営陣も含めたメンバーにてScrum Allianceが提供するスクラム研修への参加をきっかけに、それまでのチーム開発に対する取り組みを見直し始め、去年3月からはOdd-e Japan 江端氏によるコーチングも取り入れながらチーム改善に向けた探究を続けています。
カンファレンス参加への動機
私自身も専任Scrum Masterを始めて1年半になろうとしていますが、日々の業務で専門的に扱う「Scrumやチーム改善、組織改善」のテーマについて世界ではどんな話がなされてるのかや日本以外でScrum Masterや組織改善をやってる人たちと自分の違いなど肌身で感じ、今後の取り組みに活かしたいたいと思っていました。 ただ、行きたい気持ちはあるけれど安くはない投資コストが必要となるなど諸々の事情もあり、社内に提案する1歩の踏み方には悩んでいる状況でした。
そんな中で当社にコーチとして関わっていただいている江端氏から「ご興味ある方、一緒に参加しませんか」と頂いた一言が背中押しともなり上長らに相談・提案したところ「投資的な意味合いで了承するよ」と言って頂き、晴れて参加する運びとなりました!
目的の設定
短期で測れるモノではないですが事前に設定した目的は下記の2つで、
- 現地でしか学べないことを持ち帰り組織改善、ScrumMaster陣の業務改善に繋げる
- 海外カンファレンス参加実績を外部発信することでSM人材、その他人材の採用に繋げる
これらに加え個人目標も別途設定し、参加に向けた準備に対するモチベーションもキープすることが出来ました。
そして渡米・・・
そんなこんなで4/15(日)〜20(金)のスケジュールで渡米。このタイミングで目的地のミネアポリスは大規模寒波に見舞われ、空港からホテルに到着するまでも一苦労でした。。
参加したセッションの一部をご紹介
Genuine Agility through LeSS Product Ownership
変化に対する軽快さや適応力のある組織を作る上での(LeSSにおける)プロダクトオーナーシップの有用性について話されていました。
プロジェクト規模が大きくなった際にチームメンバーによってプロダクトの捉え方にズレが生じることがあったとしても、マーケット・顧客からみたプロダクトは何なのかをProduct Owner(以下、PO)はしっかり捉え、説明できる状態にある必要があるとも。
また、POはProduct Backlog(以下、PBL)の優先順位の最終決定者ではあるが、だからと言ってPBLの手入れの全てを一人でやらなければならないかと言うと違って居て、チームを巻き込んで出来ることがスケールする際に効果がある、とも。
Product backlog Refinement with Structured Conversations
マーケットに対して高い価値提供をする目的達成のためには、Product Backlog RefinementでProduct Backlog Item(以下、PBI)をReady(Sprint Planningで選択可能)な状態にすることが重要。
そこでPBIをReadyにするには具体的にどういったアプローチがあるのかについてPBIを7つの切り口に分解し、コミュニケーションを通じて透明性を高めていく方法論について紹介し、簡単なゲームを通じて体験しました。
感想になりますが、PBIの透明性について、具体的な基準を提示している点で非常に興味深い反面、安易にチームに適応するには投資コストもそれなりに大きくなりそうなので検討が必要ではないかな。
Stop using band-aids and fix your real problems
Sprint Retrospectiveにおいて場当たり的な課題ではなく本質的な課題(root)を導き出すための手法についてワークショップ形式で体験しました。
「重要だと思うチーム課題(=既に起こっている事実)」を1つ設定して、それが発生することで未来に起こりえる「Unfortunately Desirable Effects(=望ましくない影響。以下、UDEs)」にフォーカスを移していくことで、本来注目すべき課題へ近づいていくアプローチとのこと。
最初に設定した課題のチョイスに重要性は無く、あくまでUDEsを出来るだけ多く出してみて、その後にそれらをグルーピングしたり因果関係を整理してみることで本質的な課題が導き出せると言う主張のよう。 むしろ最初に設定した課題は、本質的な課題に迫るための切り口/きっかけ程度の印象。
このトレーナーの経験上この手法によって導き出される 3 Most Common Roots(=よく出る3つの本質課題)を紹介しワークは終了。
※抽象的に言えば、どれも同じことを言ってるようにも見えますが...
ちなみに私も4人グループで実際にこのワークに取り組みましたが、確かに上記でいう「2、Poor Vision」が根本原因になったので説得力はあるなと思いました。注意したいのは「結局これに行き着くよ!」ということでは無く「しっかりチームでプロセスを踏み、本質課題の探究をすることが大切ではないか」と言うことでした。
Raise Your Scrum Master Game
SMに必要なスキルの中でコーチングとファシリテーションの2つ(特にコーチング)を中心にポイントを説明。元にしているソースも最初に紹介してくれており、更に突っ込んで知りたければそっちを見ることも出来そう。
セルフアウェアネスの重要性やコーチングする上での環境づくりの注意点(例:そもそもコーチングって、する側とされる側の間で了解がとれていないと成り立たないものだよとか)を整理して説明してくれていて知らない人にとっての入り口的な知識としては良いのかも。
逆に実際にそれらをどう習得していくのかは、自分は本を読んだだけでは身につかないかなぁと思ったりもしました。
Facilitation Dojo
社内SMのファシリテーションスキル向上に活用できないかなぁという動機で参加。後述するけれど意見衝突時を題材にしているので、そう言った場面でのフォローのトレーニングには有効なのかも。
7人くらいのグループを作ってロールプレイ形式で展開。 意見がぶつかってる人たち(2~3人)、間に入っていく人(=ファシリテーター1人)、オブザーバー(残りの人)の3役をおいて実施。5分おきに気づきをシェアして、ファシリテーターをやる上での良い振る舞い・良くない振る舞いを出しつつ、もう1ラウンド実施し、更に振り返るといった流れ。
これ!という「答え」をスピーカー(トレーナー)が伝えるというよりは、参加者同士で学びを共有しながら実践を繰り返すアプローチで、それはそれで興味深かった。社内のスクラムマスター陣にも紹介して、是非一度社内でも有用性を検証してみたいです。
Building and Sustaining Anti-Fragile teams
Nassim Nicholas Taleb氏の著書「ANTIFRAGILE」を元に話されている。(日本語翻訳もされているので、今度ざっと目を通してみようかと思いました)なぜ Anti-Fragile なのかについては「VUCA時代を生き抜くために必要なこと」だからといった理解をしました。
書籍とも共通しますが、組織やチームの状態を「Fragile(脆い)」→「Robust(頑健)」→「Anti-Fragile(反脆い)」という形で段階分けし、その段階を移行していく上で身につける必要な要素について解説。 各段階ごとに、変化/衝突への反応や改善へのアプローチが異なるなどを整理していた。特にAnti-Fragile なチームのフィードバックは「Radical Candor(徹底した率直さ)」な状態であるなどは個人的に興味深かったです。
この本に限らず最近の組織論に関する書籍を読んでいると近しい事が言われている印象なので、再認識することも多い人もいたのではないかと思います。 この考え方に共感した前提にはなりますが、こういったチーム状態の定義を活用して自分の組織/チームはどの立ち状態、ポジションに位置しているのか共通認識を持ち、次の段階にいくにはどうしていくのかを議論するツールとして有用ではないかなと。
その他、現地だからこその経験と思うコンテンツ
Monday Mingle
カンファレンス初日夜に実施された参加者が自由参加できるネットワーキングイベント。登壇者・現役トレーナーもいるのでずっと同じ人と話すというよりは色んな人と話すような時間を過ごしました。
参加されてる方々はとにかくフレンドリー & オープンマインド。
このタイミングで仲良くなった米国やカナダ、ブラジルからの参加者3~4人とは2日目以降も定期的に情報交換したり、中国人のトレーナーには翌日以降相談に乗ってもらう機会も作れました。
Ready-Set-Train clinic
トレーナーを目指す参加者に向けて用意されたコンテンツで、現役トレーナーからいろんなアドバイスを受けられるコーナー。事前にアジェンダは用意されておらず、参加者らの要望を反映しながらアジェンダが決まっていく形。
この場で直接話されていたことではないけど、トレーナーを目指す上で必要となる能力とScrum Masterとしてレベルアップしていく上で身につけるべき能力は共通することが多そうな印象。 今回のカンファレンスで具体的な能力定義も紹介されてたので社内に持ち帰ってメンバーとも共有、ディスカッションしてみたいなと思います。
Coaches Clinic
各セッションの裏で実施されている自由参加のコンテンツ。会場の一角に用意されたスペースで自分が相談したい内容について現役のコーチに相談できるというもので、時間制限は1回15分。
今回自分は「ビジネス目標達成に対するチームのオーナーシップを促進するには」みたいなお題を相談、自分の相談する背景を説明するのに半分くらい時間を使ってしまったのもあって後半はコーチからアドバイスをもらう展開に。
コーチからは「Hoshin Kanri = 方針管理」という恐らく日本が起源の概念を使ってアドバイス頂きました。KAIZENやKANBAN以外にも日本で生まれたコトバが海外のコーチに活用されていると言うのは刺激的でした。
総括として
カンファレンス参加費・滞在費・渡航費で約30万円の費用に対して、非常に有意義な時間を過ごすことが出来たと感じていますが、せっかくなのでもう少し深堀った振り返りをしたいと思います。
良かったこと、改善したいこと
1回の参加で全てを知ったなどと言うつもりはないですが、参加する前と後での個人的な気づきの1つに少なからず目の前の業務に取り組む姿勢については大きく間違ってることはない!と感じられたのは大きかったと思います。
その一方、PJ毎や個々のメンバーに適した形での学びを持ち帰ることが出来なかったことについては次回以降の課題として記しておきたいです。今回は「個別の場面/課題」や「個別のロール」に対してふわっとした学び/気づきを持ち帰ることしか出来なかったという意味で、事前準備の段階を含めて要改善です。
今後に向けて
このブログでは今回のカンファレンスの内容をなるべく広く知ってもらえる様に心がけました。草案の段階からフィードバックをもらった社内メンバーにも「もっと詳細を知りたい」や「具体的な施策にどう活用出来るのか」などの意見も頂いたので社内フィードバック会を実施し、そう言った要望にも応えていこうと思います。
目的は達成出来そうか
「1、学びの持ち帰りと業務改善に繋げる」については直接的なアプローチとして上述した社内フィードバック会の実施やそこから派生するノウハウの活用なので、今後の行動次第としか言えないなぁと思っています。
「2、今回の参加を外部発信することで人材採用に繋げる」は↓より
〜セプテーニ・オリジナルでは一緒に働く仲間を募集しています〜
ここまで読んで頂いた方の中でチーム開発やスクラム活用に興味があるという方は是非一度、
採用サイトを御覧ください!!
ここまでお読み頂き、ありがとうございました。それではまた!